『水の駅』
1981年4月転形劇場工房で初演。
完全な沈黙で演じることを前提とした一連の作品群の第一作。
舞台中央にある握り手の壊れた水道から絶え間なく水が流れ、舞台奥をゴミが山のごとく覆う。
少女、二人の男、夫婦、老婆などが水場に群がり、束の間互いに関わるが、やがてどこかへ去っていく。
円環構造を持つ9つの場面からなり、総勢約20名の人物が登場する。
非常に遅いテンポで演じられるのが特徴であり、太田本人によると俳優は「二メートルを5分で歩くほどのものとなった」太田及び転形劇場の代表作であり、1981-88年までに24カ国、公演回数200以上を重ねた。
太田省吾
中国済南市生まれ。
9歳まで北京で過ごし、敗戦後引き揚げ。
学習院大学政経学部中退。発見の会を経て、1968年に劇団転形劇場を旗揚げ。
1970年より主宰、同劇団の演出家兼劇作家として活躍。『小町風伝』(1977)で岸田国士戯曲賞、『水の駅』(1981)で紀伊国屋戯曲賞。
『水の駅』をはじめとする無言と緩慢な動きと劇作・演出の中心とした「駅シリーズ」で特に知られる。1988年に劇団が解散したのちは、藤沢市文化センター芸術監督、近畿大学教授、京都造形芸術大学教授を務めた。随筆集『裸形の劇場』『劇の希望』『舞台の水』など